詭弁論理学、野崎昭弘著、中公新書、中央公論社出版
東京キリストの教会のような増殖主義の団体は様々な『詭弁』を用い新来者を翻弄する。「何かがおかしい」「納得できない」「府に落ちない」と感じながらも「何がおかしいのか明確に説明できない」のが新来者、脱会者の、さらには現役メンバーの悩みではないだろうか。
私が東京キリストの教会に脱会状を提出した時も「自分が自己中心的に、わがままに振舞っているのではないか」「本当の真理に逆らっているのではないか」との不安を完全には拭い切れてはいなかった。十段階の勧誘スタディーに従えば、必然的に出てくる答えは「東京キリストの教会でバプテスマを受け、以後メンバーとして活動する」以外にはなかったのある。
脱会直後から別の教会で旧約からの聖書勉強を始めた。しかしながら聖書の勉強を続けていくだけでは何かモヤモヤとした疑念が払いきれなかった。東京キリストの教会が異常であり、恵みがなく、キリスト的でないのは解っても「もしかして本当の真理があるかもしれない」との悩みは消えうせなかった。そんな中で見つけたのが〔詭弁論理学〕である。
〔詭弁論理学〕は教会バザーの売れ残りの中から拾ったものである。バザーの終了後、後は捨てるだけだから欲しいものは持って行って良い、とのことで、どれどれと探してみたがロクな本がなかった。その中で〔詭弁論理学〕との題名は私の目を惹いたのだった。「全て100円」と書かれた使い古しのダンボールの中薄汚い本だった。湿気や温度で表紙が波打ち、カビも生えて要るように見えた。
この〔詭弁論理学〕は腑に落ちない論議を明確に示してくれるのでなければ、進むべき道を教えてくれるのでもない。正義について語るのでもなければ、絶対の真理を掲げる事もない。ただ『明確にできない議論に安易に納得するべきではない』ことを教えてくれる本である。
「何故、鏡の中の映像は上下ではなく左右のみが反転するのか?」などの日常的疑問から歴史的エピソードまで実例を紹介する。強弁、二分法、相殺法…詭弁弁証法をやさしく解説する希代の入門書である。
推薦者:イソップ寓話集