back

韓国カルト、日本で2千人 若者勧誘、教祖が性的暴行

2006年07月28日08時29分

 首都圏や関西で、大学生ら20代の若者が、韓国人男性=海外逃亡中=の教祖に絶対服従を誓う新興宗教集団(カルト)に引き込まれ、マンションの一室で共同生活を送ったり、信者同士の合同結婚式に参加させられたりしていることがわかった。集団には、約2000人が登録されているとみられ、少しずつ勢力を拡大している。教祖の女性信者に対する性的暴行も常態化しており、これまでに100人を超す学生らが被害に遭ったとされる。脱会支援を進める日本基督教団や弁護士らには、「子どもを取り返したい」という親らの相談が200件以上、寄せられている。

 この集団は、キリスト教の聖書を独自に解釈する教義を掲げ、韓国で80年ごろ設立された。当初は「モーニングスター(MS)」、現在は「摂理」と呼ばれている。教祖の鄭明析(チョン・ミョンソク)氏(61)は、女性信者への性的暴行が韓国で社会問題化した99年、国外に脱出。ソウル地検などから強姦(ごうかん)容疑で指名手配され、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配されたが、逃亡を続けている。

 集団の内部資料などによると、日本側の信者は、全国の国立大学や有名私立大学の学生や卒業生がほとんど。女性が約6割を占める。東京、大阪、名古屋、福岡、札幌など40カ所前後に「教会」と呼ぶ拠点がある。集合住宅の一室の場合が多く、一部の信者はここで数人単位の共同生活を送っている。

 集団内では、男女交際が禁止され、信者同士による合同結婚式が年1回のペースで開かれている。毎月、一定額の献金が課せられ、一部が教祖の逃亡資金として使われている疑いがある。

 脱会者らの証言によると、鄭教祖は、国際手配を受ける前の02年までは頻繁に来日していた。大阪や千葉の側近信者の自宅に滞在。数人から10人前後の女子学生らを連日のように招き、「健康チェックをする」などと称し、わいせつ行為や乱暴を繰り返したとされる。海外逃亡を始めてからは、イタリアや中国、台湾などを転々とし、側近にひそかに指示を出してきた。女性信者らは「教祖が会いたがっている」と言われ、潜伏先に相次いで呼び出されたという。側近からは「誰かに言えば地獄におちる」などと、強く口止めされていた。

 鄭教祖の暴行を受けた後、教義に疑問を感じ、脱会する女性が相次いだ。そのうちの一人は「乱暴されているときは何が起きたのか、理解できず、頭の中が混乱し、教祖にされるがままだった」と打ち明けた。「摂理」は日本では、15年以上の活動歴があり、別の脱会女性は「被害に遭った日本人女性はゆうに100人を超える」と話している。

 集団の勧誘活動はサッカー、演劇などのサークル活動を装って学生に食い込み、人間関係を築いた後で徐々に「教義」を説いてマインドコントロール状態に導く手法。信者の親らの脱会相談にのっている日本基督教団は「組織的手口で思想を変え、人格を破壊するカルトの典型」と指摘する。

 「摂理」の実態に詳しい渡辺博弁護士(第二東京弁護士会)は「被害女性のほとんどは泣き寝入りを強いられてきたが、これ以上の被害を出さないためにも、教祖やその側近たちを刑事告訴することも考えている。追い詰められた教祖の命令しだいでは、信者たちがいつ暴走を始めるかわからない危険性もあり、今のうちに対策を講じなければ手遅れになる」と話している。

 鄭教祖は、「摂理」を設立する以前の70年代に、世界基督教統一神霊協会(統一教会)でも活動していた。

 統一教会広報部は「鄭氏が2年間ほど、韓国の統一教会に在籍した事実はあるが、当教会と摂理と呼ばれる集団とは一切関係ない」と話している。

 朝日新聞は、集団の日本側責任者とみられる女性に取材を申し込んだが、27日までに回答はない。

 〈摂理〉 台湾、マレーシアなどにも活動拠点がある。各教会のリーダーは信者の中から教祖の直接指名で選ばれる。信者歴に応じて社会人担当、キャンパス担当などの役職を任される。水曜と日曜に定期礼拝が開かれている。

出典⇒ http://www.asahi.com/national/update/0727/OSK200607270231.html