7章 髑髏形石笛の奇象

 

目下東京目黒に本道宣布会というものを作り、盛んに惟神の本道を宣布しておられる神道家九鬼盛隆方へ三年前に山口県の某氏から手球大の奇形な石笛を寄贈して来たが、その石は漆黒色の質の堅い如何にも人の頭骨に寸分相違のない面相をした自然石である。そして眼孔に当たる穴を吹くと鳴るということであるが、慣れない間は誰が吹いても鳴らぬから九鬼氏も貰ったまま珍蔵して置いた。ところがこの石は恐ろしい霊があって、どんな人も位負けするか又は障りがあって持てないので、必ず棄てられる石であるが、九鬼氏は実に7番目の持ち主に当たるそうであるが、今度は石も落ち着いたらしく、何の異状もない。ある日、氏の信仰する神が、この石は天下無双の霊石で、神が汝に授けた石笛であるが、追ってその姉妹石を汝に得させる事になっているという神懸りのお告げがあった。それから後のある夜2時頃、四隣が静かになった頃、氏は未だ就眠せずにいたところが、屋上近い空中で心魂が凍るような思いのする程冴えた石笛のような音がする。高低の調子は単純であるが、言うべからざる雅味のある調子を以って暫く吹き鳴らされてからパタリと止んだ。更けた夜は再びもとの深い寂莫に帰った。氏はこの妙音が何物によって起こったのか解しがたく、神怪な思いに打たれて容易に眠られなかった。すると翌日、神から昨夜吹いて聞かせたのは汝の持てるかの石笛であるぞとのお告げがあったので、氏は驚いて感激した。現物は書斎の棚の上にあっても、神はその精體を屋上に抽出して、これを吹奏すること、実物を以ってするのと同一なる妙力があるのだから不思議である。しかし、悲しいかな、凡俗の人間には理解できないから、迷信だとか幻覚の音声だとか言って一笑に付するのである。神の絶大なる神秘力は到底人間の凡智を以って憶測を許さざるものがある。然るに自惚れた万物の霊長は何事でも人間の低い智慧や浅い経験や鈍い感覚に基づいて、宇宙一切の現象を解釈し得ると思うから、神を離れて神を無視し霊性を侮り、遂には人格を敗り、国体の尊厳を忘れ、やがては社会国家に害毒を流すに至るのである。(霊光)

(小西雲鶴『禊法鎮魂帰神法實修釈義 全』昭和245日発行 p.53-55より 一部旧かなを新かなに直す。)

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